The Hotel
Belgium
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ひときわ高くそびえる白い27階建の建物「The Hotel」は、1960年代にブリュッセルで先駆けとなる国際ホテルとして、ヒルトンにより建設された。2010年に別のホテルグループにより買い取られたのち、2年越しの総リノベーションを経て、2011年“The Hotel”として新たに開業した。2014年にはバラク・オバマ前大統領が全室貸切で滞在したというホテルだ。
玄関を入ると、広々としたファッション性の高いロビーに迎えられる。座り心地の良いソファーがいたるところにあり、気分に合わせて腰かけられるのが嬉しい。壁際にはディスプレイを兼ねた正方形のショーウィンドウが並ぶ。若干の商業くささはあるものの、空間を華やかに演出している。
16階の部屋に通されるとまず目に入ったのが、窓から広がるブリュッセルの景色。周囲に高い建物がないのは、当ホテル建設後にブリュッセル市が新たな高層建築を制限したのが理由だという。窓際には壁の横幅目いっぱいに3メートルのソファーが置かれ、眼下に広がる景色を心行くまで堪能できるように配慮されている。
景色以外は脇役とばかりに、部屋はいたってシンプル。バスルームがある一角は壁全体が焦茶色で覆われ、明るい室内とは対照的に存在感が消されているように見える。
浴室はコンパクトながら、高級感を持たせる工夫を随所に感じる造りになっている。
床と壁は落ち着いたトーンのタイルで統一され、洗面台背面にある床まで続く大きな鏡が空間に広がりをもたせている。明かりは天井スリットと鏡裏からの間接照明で程よく確保されており上品な印象に。ヨーロッパのホテルは、照明の使い方がとても上手い。
地上階のレストランは、裏の公園に面した立地を活かした設計。サンルームの様なアーチ形の窓を通して天井からも明るい外の光が入り、晴れた朝はとても気持ちが良い。外の公園を近所の人が犬を連れ歩いているのが見え、周辺の生活感を感じながら朝食がとれるのは何だか楽しい。
レストランのフロアは窓に面して横幅いっぱいがカウンター席になっている。といっても一般的なカウンターではなく一定の間隔で半円状のテーブルが作られており、直線のカウンター部分は花瓶などのディスプレイ棚として使われている。設計次第で、カウンター席はこうも優雅な空間になるのか!と唸りつつ、焼き立てのパンをほおばる。
プライバシーを守りながら食事をしたいゲストの為に、カーテンで緩やかに区切られたプライベートダイニングも用意されている。金色を基調とした中々派手なデザインで、先ほどまでのパブリックダイニングとは対照的。私には派手すぎて落ち着かないけれど、エントランスの華やかな雰囲気と通ずるものがある。
ここでしか味わえないパノラマ風景を見ながら歴史ある建物で過ごす時間は、特別な体験となると思う。初めてブリュッセルを訪れる方には、ぜひおすすめしたい。